今回は、狭心症と心筋梗塞の予防方法にについてご説明します。
日本は、世界有数の長寿国であることはご存知かと思います。
しかし、人は必ず何らかの原因で死亡することに変わりはないです。
最近の統計では、日本人の死因の第1位はがん、第2位は心疾患、
第3位は脳血管疾患となっています。
心疾患と一口に言ってもたくさんの病気が存在するわけですが、その中
でも本日お話する心筋梗塞は死因となりうる心疾患の代表です。
がんについては、現在多くの研究が盛んに行われているものの、確たる
予防法や治療法があるわけではありません。
それに比べて、狭心症や心筋梗塞は皆さんが知識を深めることによって
予防や早期発見を可能とする疾患であり、またその治療法も近年確実に
進歩している疾患であります。
本日はどうやって狭心症や心筋梗塞を予防していったら良いのか、
あるいは早くみつけるにはどうしたら良いのか、もしこれらの病気に
なったらどう対処したら良いのかについて、ご説明したいと思います。
狭心症とは
狭心症は、冠動脈の血流が悪化し、心臓が一時的に酸欠状態となって
起こります。
胸のあたりに圧迫されるような痛みや苦しさを感じたり、人によって、
あごやみぞおち、耳のあたりに痛みを感じることもあります。
症状は、数分から十数分程度続きます。
安静にしていると治ることもありますが、これをくり返す場合には、
ニトログリセリンなどの常備薬で発作を抑えることができます。
狭心症には、2つのタイプがあります。
(安定型)
ふだんはあまり起ることはないが、階段を上ったり、運動したりした
ときに起こりやすい症状。
(不安定型)
運動時にかぎらず、睡眠中など安静にしているときに起こります。
このタイプは心筋梗塞へと進んでいきます。
心筋梗塞とは
狭心症は、冠動脈の血流が悪化し、心臓が一時的に酸欠状態となって
起こります。
胸のあたりに圧迫されるような痛みや苦しさを感じたり、人によって、
あごやみぞおち、耳のあたりに痛みを感じることもあります。
症状は、数分から十数分程度続きます。
安静にしていると治ることもありますが、これをくり返す場合には、
ニトログリセリンなどの常備薬で発作を抑えることができます。
狭心症と心筋梗塞はどんな病気なのか?
狭心症や心筋梗塞の名前を聞いたことはあるかと思います。
また、身内や友人、近所の方などこれらの病気で亡くしている方も
いるかもしれません。
それでは、たとえば「狭心症」について考えてみたいと思います。
誰がこの名前を付けたのかを私は知りませんが、字の通り解釈
すれば、心臓が狭くなるという病気のように思えますよね。
でもそれは違うのです。
狭くなるのは心臓そのものではなく、心臓に血液を送っている血管、
すなわち「冠動脈」の方なのです。
冠動脈がこれらの病気ですから、狭心症や心筋梗塞をまとめて
「冠動脈疾患」と呼ぶこともあります。
また、冠動脈が狭くなることによって、心臓(心筋)に行く血液が
不足しますから、「虚血性心疾患」という呼び方もされることが
あります。
さて、原因はどうも血管(動脈)の側にあるのです。
「動脈硬化」という言葉を耳にしたとこがあるかと思います。
そうなのです。
冠動脈に動脈硬化が強く起こると、狭心症や心筋梗塞を起こす
ことになるのです。
「動脈硬化」も字だけ見ると、動脈が硬くなると解釈されそう
ですが、通常は硬くなるだけではなく、動脈の壁にコレステロ
ールがたまったり、線維性の被膜ができたりして、血管の内腔が
狭くなるのです。
そうなると、当然そこを通る血液の量は少なくなり、心臓の筋肉
が必要とするだけの血液量を供給できなくなることになります。
ふだん安静にしている時には何ともなくとも、力仕事をしたり、
階段を昇ったり、走ったりして心臓に負担がかかると胸がしめつけ
られるようになる場合が、典型的な狭心症です。
この場合の狭心症は「労作性狭心症」とも呼ばれます。
しかし、狭心症は安静時にも起こることがあります。
この型の狭心症には2つのタイプがあります。
ひとつは動脈の壁に存在する平滑筋というのが収縮を起こして、内腔
が狭まるもので、これは「異型狭心症」あるいは「冠れん縮性狭心症」
と呼ばれ、しばしば明け方などに発作を起こします。
もう1つは、内腔がせまい部分に血の固まり(血栓)ができて、内腔が
急に高度に狭まる場合です。
要するに安静にしていても、心臓の筋肉に必要な血液が送れていないわけ
ですから、これは大問題です。
通常、このタイプの狭心症は「不安定狭心症」と呼ばれ、心筋梗塞の一歩
手前と判断されます。
緊急に治療を開始しないと、心筋梗塞を起こす可能性が高くなります。
いずれにしても、狭心症の段階で診断されれば、治療法がありますから
まだ良いのです。
問題は心筋梗塞です。
狭心症を放置した場合、最終的にある確率で冠動脈の閉塞を起こし心筋
梗塞を起こします。
心筋梗塞と狭心症の違いは、狭心症の場合には通常心臓の筋肉の傷害が
ないか、あるいはあっても少ないわけですが、心筋梗塞では確実に心臓の
筋肉が傷害(壊死と言います)されます。
急激な筋傷害が起こりますと、質の悪い不整脈が高い頻度で起こってきます。
そして、この質の悪い不整脈がしばしば心筋梗塞の発症早期に命を落とす
原因となるのです。
心筋梗塞の場合は通常、胸痛が持続しますから、がまんしないで救急車を
呼んでできるだけ早めに病院へ行くことが大切です。
心筋梗塞は前ぶれがなにもないこともよくあります。
狭心症の発作を1回も経験していない人でも心筋梗塞になりうるのです。
それは狭心症と心筋梗塞が必ずしも連続した線上にないことを意味しています。
すなわち、動脈の内腔がある程度広くとも何らかの原因で急に血栓ができて、
完全に動脈を閉塞してしまえば心筋梗塞を起こすわけです。
こうなると、心筋梗塞を予見するということはきわめてむずかしいという
ことになります。
狭心症や心筋梗塞を予防するにはどうするか!
病気の予防というのは、治療よりもむずかしい問題です。
狭心症や心筋梗塞は冠動脈の動脈硬化が一番の原因であることは
わかってきました。
また、その動脈硬化を促進させるものとして、高血圧、高脂血症、
喫煙(タバコ)、糖尿病、肥満などが上げられています。
しかもこれらが単独ではなくて、重なるほど悪いということも
わかってきました。
ですから、まずは自分自身がこれらの要因(危険因子といいます)を
もっているのかどうかを知ることが大切です。
これらの危険因子はすべて、生活習慣と密接に関わっているものです。
禁煙、塩分やカロリー・コレステロールを抑えた食事、適度な運動
(1日30分程度の早足歩行)、適度な飲酒(ビール中びん1本程度、
日本酒1合程度)、定期的な体重測定などを積極的に行うことが大切です。
①禁煙
喫煙が虚血性心疾患をはじめ循環器病によくないことはないです。
たばこの煙には多くの物質が含まれ、特に循環器ではニコチンや一酸化
炭素の影響が大きいと言えます。
また、血管の内皮にも影響し、血管収縮、血液凝固、動脈硬化をもたら
します。
たばこの煙は、そばにいる方にも間接的に悪い影響を与えます。
②食事
欧米に比べて、これまで心筋梗塞症や狭心症が少なかった大きな理由
の一つに食生活の差があります。
伝統的な和食の良さが見直されています。
国内にも長寿県があり、代表的なのは沖縄県です。
沖縄には伝統的な和食に加え、低塩分で高タンパク食、海草などの食物
繊維の多い琉球料理があります。
③適度な運動
軽い運動が狭心症や心筋梗塞症の予防となります。
持続的な運動を週3~4回30分以上、可能なら毎日30分程度すればよい
でしょう。
瞬発力が必要な運動は避けて下さい。
また、早朝や深夜は、冠動脈が日中より収縮していることが多いので避ける
ことをオススメします。
④ストレスを避ける
精神的・肉体的ストレスがかかりますと血液中のコレステロールが上昇して
動脈硬化が進行しやすくなり、また血中の交感神経系ホルモンが増え、血圧が
上昇して冠動脈内皮の傷害が生じやすくなり、心筋梗塞症の引き金となります。
『焦らず、怒らない、明日できることは今日しない』という精神で、のんびり
と着実な生活リズムをつくりましょう。
狭心症や心筋梗塞を早く見つける方法とは?
狭心症や心筋梗塞の典型的な症状は、胸痛や胸の圧迫感・しめつけ感です。
狭心症では通常数分から長くとも15分程度で症状は消失しますが、心筋梗塞
の場合には持続するのが普通です。
また、冷や汗を伴ったり、顔色が悪くなったり、吐き気を伴うこともあります。
心筋梗塞は命とりになる病気ですから、持続性の胸痛がある場合には救急車
を呼んで病院にできるだけ早く行くようにして下さい。
狭心症と心筋梗塞の治療法
治療方法は大きく3つに分類されます。
①薬
主として冠動脈を拡張させる薬(硝酸薬やカルシウム拮抗薬など)と冠動脈
の閉塞を防ぐ薬(抗血小板剤)が使われます。
心筋梗塞の場合には心筋の負担を軽減する薬(アンギオテンシン変換酵素
阻害薬やベータ遮断薬など)が併用されることもあります。
②心電図
狭心症が疑われる場合、発作時の状態を調べるため、運動をしてもらいながら
心電図をとります。
これを「負荷心電図」といいます。
急性心筋梗塞症ではふつう30分以上、前胸部に強い痛みや締めつけ感、圧迫感
が続き、痛みのために恐怖感や不安感を伴います。
その痛みはほとんどの場合、前胸部中央や胸全体で、まれに首、背中、左腕、
上腹部に生じることがあります。
冷や汗、吐き気、おう吐、呼吸困難を伴うこともあります。
心筋梗塞では特徴的な心電図の変化が現れます。
狭心症と異なり、変化が残るため、多くの場合、診断は容易です。
診断時に以前の心電図があれば、どう変化したのかを比較してもらうのに
役立ちますから、担当の先生からコピーをもらっておくとよいでしょう。
③血液検査
狭心症は血液検査に異常は見られませんが、心筋梗塞症では心筋細胞が破壊
されて細胞から酵素が血液中に漏れてきます。
その代表的なものが「クレアチンフォスフォキナーゼ」(CPK)で、心筋梗
塞症の発作後4~5時間たってから血液中に増えてきます。
④冠動脈造影検査
カテーテルと呼ばれる細いビニールチューブ(太さ1ミリぐらいの柔らかい
チューブ)を手足の動脈から心臓の血管内へ送り込み、これを通じて造影剤
を血管内に注入、冠動脈を撮影するものです。
この検査は虚血性心疾患の診断だけでなく“風船療法”にも使います。
“風船療法”は冠動脈の狭くなった部分や閉塞した部分に、先端に風船(バルーン)
を取りつけたビニールチューブを入れてふくらませ、冠動脈を広げる治療です。
この方法は「バルーンによる冠動脈形成術」と呼ばれています。
5年ほど前は細長い風船(バルーンカテーテルと言います)で冠動脈の狭い部分
や閉塞した部分を拡張するという方法(経皮的冠動脈形成術と言います)が主に
行われていましたが、最近では風船で拡張させた後に、ステントといって金属の
網状の筒を植え込む治療が主流になっています。
風船の拡張だけでは、数ヶ月以内に40~50%の患者さんでまた冠動脈が狭くなる
現象(再狭窄)が起こり、ステントを入れることでその率を半減させることができ
るからです。
なおステントを用いた冠動脈狭窄の拡張成功率は95%以上に達しています。
心筋梗塞においてもこのステント留置はきわめて有効な治療法であり、5年ほど前は
15%程度であった急性心筋梗塞の死亡率が最近では5%程度にまで低下してきています。
ただし、ステントを入れた場合でも15~20%の再狭窄は起こるため、定期的な検査が
必要となります。
⑤手術治療
これは冠動脈バイパス術といって冠動脈の狭くなった部分を飛び越して別の血管をつな
ぐ手術です。
かつては下肢の静脈を部分的に切り取って大動脈と冠動脈をつなぐことが多かったので
すが、最近では内胸動脈などの動脈を用いた手術が主流となっています。
同時に人工心肺装置も使わないで手術が行われるようになり、手術治療においても患者
さんの負担軽減と成績の向上が見られるようになっています。
まとめ
狭心症や心筋梗塞は、今後も増える可能性の高い病気です。
これらの病気の成り立ち、予防、検査、治療について知っておくことは
御自身にもきっと役立つことがあるものと思います。